☆ー目次ー☆
1,太古のロマン
世界各地の神話や伝説に登場する「世界樹」についての探求や、その象徴的な意味合いに関する興味を示しています。世界樹は、宇宙の構造を象徴し、天と地、そして地下世界を結ぶとされる神聖な樹です。北欧神話のユグドラシル、インドのアシュワッタ、マヤ文明のワカクナフなど、多くの文化において類似の概念が存在します。
これらの樹は、宇宙の中心として、また生命の源として崇拝されてきました。世界樹の伝説や象徴性は、自然と宇宙への深い敬意、人間と自然界とのつながり、そして生と死、再生の循環を表していると考えられます。
2000人が手をつないで囲むような太の巨木
このような巨木は実際には存在しないかもしれませんが、世界には非常に大きな木がいくつか存在しており、その中でも特に巨大なものは人々に深い感銘を与え、しばしば伝説や神話の題材となっています。
例えば、アメリカ合衆国カリフォルニア州にあるセコイア国立公園やキングス・キャニオン国立公園には、世界で最も体積が大きい木々が存在します。これらの巨大なセコイアの中で最も有名なのは「ゼネラル・シャーマン」と呼ばれる樹で、高さは約83メートル、幹の周囲は約31メートルにも及びます。しかし、2000人が手をつないで囲めるほどの大きさではありません。
このような巨木が人々に与える印象は、太古のロマンを感じさせ、自然の驚異と生命力の象徴として捉えられます。また、こうした巨木は生態系の重要な一部として、多くの生物に生息地を提供しています。
2,想像力
世界樹は多くの文化や神話に登場する、宇宙の秩序や生命の連続性を象徴する強力なイメージです。この概念は、世界の中心に立つ巨大な樹木が天と地、そして下界を結びつけるというもので、様々な形で表現されます。世界樹は生命の源、知識と智慧の象徴、さらには世界の構造そのものを表しているとされます。以下は、世界樹がどのように異なる文化において想像され、表現されているかの例です。
北欧神話のユグドラシル
北欧神話において、ユグドラシルは宇宙の中心に存在する巨大な樹木であり、九つの世界を支えるとされています。この樹はアシの木であり、その枝は天を支え、根は異なる世界に伸びています。ユグドラシルは生命のサイクル、再生と破壊の象徴でもあり、多くの生物がこの樹に住んでいるとされます。
ユグドラシルと九つの世界と象徴性
- アースガルズ(Åsgard) ☆神々の世界。アース神族が住む場所です。
- ミズガルズ(Midgard) ☆人間の世界。アースガルズとはビフレストという虹の橋で結ばれています。
- ヨトゥンヘイム(Jotunheim) ☆ 巨人の世界。アースガルズの強敵である霜の巨人たちが住んでいます。
- ニヴルヘイム(Niflheim) ☆氷と霧の世界。ヘルが支配する死者の国もここにあります。
- ムスペルヘイム(Muspelheim) ☆ 火の世界。炎と熱が支配する場所です。
- スヴァルトアールヘイム(Svartalfheim) ☆ 黒きエルフ(ドワーフ)の世界。優れた工匠たちが住んでいます。
- アルヴヘイム(Alfheim) ☆ 光のエルフの世界。美しさと芸術が栄える場所です。
- ヴァナヘイム(Vanaheim) ☆ ヴァン神族の世界。豊穣と海の神々が住んでいます。
- ヘルヘイム(Helheim) ☆ 死者の世界。不名誉な死を遂げた者たちが行く場所です。
ユグドラシルの下では、さまざまな神話が繰り広げられ、神々や英雄たちの冒険が語られます。また、ユグドラシル自体も様々な生き物によって住まわれ、それぞれが世界樹の生命に影響を与えています。例えば、根元にはニーズヘグ(Nidhogg)というドラゴンがおり、樹皮をかじり続けています。
北欧神話に登場するドラゴンの名前で、「憎悪をかき立てる者」を意味します。ニーズヘグは、ユグドラシルの生命力を脅かす力として象徴され、世界の終末をもたらす要因の一つとされることもあります。北欧神話においては、このような破壊的な力が宇宙のバランスや秩序と対立する様子がしばしば描かれます。
中国神話の扶桑
中国神話では、扶桑は遥か東海の果てにそびえる巨樹です。この樹は日の出の象徴であり、太陽がこの樹に宿るとされています。扶桑はまた、不老不死の薬と関連づけられることもあり、神話や伝説の中で重要な役割を果たします。『山海経』などの古代中国の文献に見られます。『山海経』は、中国の古代地理と神話を記した文献で、奇妙な生物や神話上の地理について詳細に記述しています。扶桑はその中で、太陽が宿るとされる巨大な樹木として描かれており、この樹木の周りを太陽が旅するというイメージが語られています。
メソポタミアのエトゥムナンキ
メソポタミア文化では、バビロンのエトゥムナンキ(天と地を結ぶ塔)が、世界樹に類似した概念を持つと考えられることがあります。これは神々と人間の間の結びつきを象徴する構造物で、天界への門として機能します。
マヤ文化のワカクナフ
マヤ文化では、宇宙の正確な用語としては「ワカクナフ」ではなく、「ワック・チャナフ」またはマヤ文化における世界樹の概念を指す他の表現が適切かもしれません。中心に立つ巨大なセイバの木、ワカクナフがあります。この樹は天と地下世界を結びつけるとされ、マヤの宇宙観の中心的な要素です。
シャーマニズムの世界樹
多くのシャーマニズムの伝統において、世界樹はシャーマンが異世界への旅をする際の道しるべとされます。この樹は、現世と霊的な世界をつなぐポータルの役割を果たします。
これらの例からわかるように、世界樹は人類の想像力に深く根ざした普遍的なシンボルです。それぞれの文化は独自の解釈を加え、世界樹を通じて宇宙の構造、生命の起源、そして人間の精神的な追求を表現しています。
3,宇宙の神秘
中国神話における宇宙樹や巨大な樹に関する記述は、特定の一つの物語や概念に限定されるわけではありませんが、中国の伝統的な神話や文化の中には宇宙や生命の起源、統一性を象徴するような木。
中国における宇宙樹のイメージを想像する場合、それは宇宙の秩序や調和を象徴し、天地のエネルギーが流れ込む場所として描かれるかもしれません。この樹は、天界と人間界、そして地下世界をつなぐ重要な役割を果たし、多様な生命体や精霊たちがその存在によって結びついていることを示すでしょう。
4,シュメール神話
シュメール文明は紀元前4500年頃から紀元前1900年頃にかけて、現在のイラク南部にあたるメソポタミア地域で栄えた世界最古の文明の一つです。シュメール人は農業、灌漑システム、都市計画、文字(くさび形文字)の発明など、多くの進歩を遂げました。
シュメール文明における「世界樹」についての具体的な言及を見つけるのは難しいかもしれません。古代メソポタミアの文化では、宇宙の中心に立つ巨大な樹木という概念が存在したかもしれませんが、これを直接的に「世界樹」と呼ぶ記録は少ないです。しかし、シュメール文明を含む古代メソポタミアの神話や宗教的信仰には、宇宙の構造や自然界、神々の関係を象徴する多くの要素が含まれています。
「世界樹」という概念は、主に北欧神話や他の文化圏における神話で見られるもので、宇宙の中心に立ち、様々な世界を結びつける神聖な樹木を指します。一方で、シュメール文明やその後継のバビロニア、アッシリアの神話には、生命や豊穣、知識の象徴として重要な役割を果たす神聖な樹木に関する言及があるかもしれません。
例えば、エンキ(シュメール神話における知恵と水の神)やエンリル(風と土地、王権の神)の神話には、宇宙の秩序や生命の源泉としての水や植物に関連する要素が含まれている可能性があります。また、ギルガメシュ叙事詩などの古代文学作品には、不死の命を探求する旅の中で神聖な樹木が重要な役割を果たす場面が登場することもあります。
キスカヌの木
シュメール神話において、ラピスラズリの外観を持つ「キスカヌの巨木」についての具体的な言及は、一般的な古代メソポタミアの文献や神話の中では特に目立ったものではありません。しかし、シュメール文化やその後継のバビロニア、アッシリアの神話には、神聖な樹木や象徴的な素材に関する物語が数多く存在します。これらの物語の中には、樹木が神々の力や知恵、生命を象徴する要素として登場することがあります。
「キスカヌの巨木」という具体的な表現がラピスラズリの外観を持つとされる背景には、神話内での象徴的な意味合いや、そのような樹木が持つ神聖な力や価値に対する言及が含まれる可能性があります。ただし、この表現が指す具体的な神話や伝説、その文脈や詳細については、広く知られたシュメール神話の中では明確には特定されていないようです。
5,デビルズタワーの柱
デビルズタワー(Devils Tower)は、アメリカ合衆国ワイオミング州にある有名な一枚岩(モノリス)で、1977年にスティーヴン・スピルバーグの映画『未知との遭遇』で特に有名になりました。デビルズタワーは、その独特な柱状節理が特徴で、これは岩石が冷えて収縮する際に自然に形成されたものです。この柱状の形状は、岩石が垂直に割れて柱のような形を成すことで形成されます。
デビルズタワーの柱は、登山家や地質学者、自然愛好家から大きな注目を集めており、その壮大で神秘的な外観は多くの人々を魅了してやみません。この自然の造形物は、地球の地質学的な過程と自然の力を示す印象的な例として、また、先住民の文化においても重要な意味を持つ聖地として尊重されています。この独特な地形は、約5,000万年前のペリオドに形成されたと考えられています。
科学的な説明によると、デビルズタワーは固まったマグマが地表に達する前に冷えて固まったことで形成されたものです。これは、地下深くでマグマが冷え固まり、その後の数百万年にわたる侵食作用によって周囲の岩石が削り取られ、現在見られるような独特の柱状の岩塔が露出したものです。
デビルズタワーが巨大な化石の木であるという説は、その独特な外観と柱状節理が木の幹のように見えることから想像されたものですが、この説は科学的な証拠に基づいていません。実際には、デビルズタワーは火山活動によって形成された地質学的特徴であり、巨大な化石の木ではありません。
6,福岡
『日本書紀』に登場する、いまの福岡県三池で倒れた巨樹の長さはどのくらいとされているでしょう?
推定3000mの巨木
具体的には「筑紫の国の三池郡に倒れた大樹」に関するものです。この巨樹は、非常に長大であったとされ、その長さは約2700丈(約8キロメートル)と記されています。この記述は、実際の物理的な大きさよりも、神話的、伝説的な要素を色濃く反映していると考えられます。
『日本書紀』は日本最古の歴史書の一つで、712年に完成しました。神代から7世紀末までの歴史を綴るこの書物は、実際の歴史的出来事と共に、多くの神話や伝説も含んでいます。そのため、記述されている内容全てが文字通りの事実として受け取られるわけではなく、神話的な意味合いを持つ話も多く含まれています。
現実の木が2700丈(約8キロメートル)という長さに成長することはあり得ませんが、このような記述が『日本書紀』に含まれることで、古代人が自然現象や特定の地域に対してどのような想像力を持っていたか、また、それらをどのように神聖視していたかを伺うことができます。この巨樹に関する記述は、当時の人々の心に残る印象的な自然現象や、地域に伝わる重要な物語の一部を形成している可能性があります。
地球の歴史上、特に古生代や中生代には、現在よりも大きな植物が存在した時期もありますが、それでもその高さが3000メートルに達したという証拠はありません。例えば、石炭紀(約3億6000万年前から約2億9900万年前)には、高さが数十メートルに達する大型のシダ植物や笹のような植物が豊富に存在しており、これらは後の時代の石炭資源の形成に大きく寄与しました。
7,日いずる東国は似たような記述、他にもあり
『播磨国風土記』には、仁徳天皇の治世(5世紀前半)のクスノキは、朝日の時には淡路島に影を落とし、夕日の時には大倭(やまと)島根をその大樹による影で隠したとされています。『今昔物語集』には、近江国栗太郡にハハソの巨樹があり、その幹回りは700尋(1260メートル前後)、朝日の影は丹波国をさし、夕陽の影は伊勢国にさした。日本のホラ話もなかなか壮大ですね。
私の森引用
日本における古代の文献や物語集に記載された巨樹に関する記述は、実際には自然界の現象や物理的な可能性を超えた壮大な想像力を反映しています。これらの物語は、文化や伝統の中で語り継がれる伝説や神話として、特定の地域や自然現象に対する人々の畏敬の念や、神聖な力を象徴するものとして機能してきました。
『播磨国風土記』や『今昔物語集』に見られるような記述は、日本の風土記や物語集に特有の文化的な表現です。これらの記述は、その時代の人々が自然界に対して持っていた深い畏敬の念や、自然現象に対するロマンティックな解釈を示しています。また、これらの巨樹の物語は、コミュニティ内での口承伝説としての役割を果たし、地域のアイデンティティや自然への敬意を象徴するものとして機能していた可能性があります。
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